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AIを使うと情報は本当に漏れるのか。仕組みと事例、今日からできる対策

AIに情報を入れたら即座に漏れる、というのは正しくありません。ただし「何も設定しないまま使い続ける」と、漏れる条件が揃っていくのは事実です。禁止するかどうかより先に、漏れる仕組みと、自社が今どちら側にいるかを知ることが先です。
AIに入れた情報はなぜ漏れるのか
AIの情報漏洩は、大きく3つのパターンに分けられます。①入力した情報が他のユーザーに見えてしまう(サービス側の不具合や設定ミス)、②入力したデータがAIの学習に使われる、③AIが外部のシステムとつながっている構成から、意図しない情報が出力される、の3つです(サーバーワークス、2026年)。
つまり「AIそのものが危険」なのではなく、①はサービス側の問題、②は設定の問題、③は使い方の問題で、原因がそれぞれ違います。この3つを分けて考えないと、対策も的外れになります。
実際に何が起きたのか
海外では、韓国の大手電子機器メーカーで、エンジニアが社内のプログラムのコードをChatGPTにアップロードしたことがきっかけとなり、会社が社内での生成AI利用を禁止する新しいルールを作った例が報じられています(AI総研、2025年6月)。
2023年3月には、大手生成AIサービスで使っていた部品(オープンソースのプログラム)の不具合により、一部のユーザーが他人のチャット履歴のタイトルを見られてしまう問題が起きました。サービスは一時停止され、修正されています(日本通信ネットワーク、2025年7月)。
国内では、2025年に地方銀行の内部監査で、融資審査の担当者がChatGPTに融資を申し込んだ会社の決算書データを入力して分析していたことが判明し、金融庁への報告と全行員研修につながった例が紹介されています(GXO、2026年4月)。ただし銀行名は公表されておらず、この点は確認が取れていません。
株式会社Hajimariが2025年9月に行った調査では、AIを使っている人の過半数(20代では約63%)が会社に隠れて使っており、利用者の約80%が機密の漏洩や誤った情報の拡散といったトラブルを経験したと回答しています(Admina by Money Forward、2025年10月)。会社に隠れて使う人が多いということは、経営者が把握できていない使われ方が、すでに社内にある可能性が高いということです。
2026年1月には、IPAの「情報セキュリティ10大脅威2026」で、企業向けの脅威として「AIの利用をめぐるリスク」が初めて選ばれ、3位に入りました(サイバートラスト、2026年2月)。国が発表するランキングに初登場したという事実だけでも、軽い話ではないことが分かります。
自社がすでに漏れていないか、どう確認するか
正直に書くと、中小企業が自分たちだけでできる、公的機関が作ったチェックリストのようなものは見当たりませんでした。多くの確認方法は、専用の監視ソフトを導入する前提のもので、そのまま中小企業に当てはまるものではありません。
代わりに、今すぐ社内で聞ける質問が3つあります。
- 社員は普段、どのAIサービスを、会社のアカウントで使っているか
- 顧客の名前や決算の数字を、そのままAIに入力したことがあるか
- 「入力した内容を学習に使わない」という設定を、誰かが確認したことがあるか
この3つに即答できない場合、それ自体が「把握できていない」という答えです。Hajimariの調査で8割がトラブルを経験したと回答している以上、「うちは大丈夫」と思っている状態こそ、まず確認すべき対象です。
禁止せずに防ぐには何をすればいいか
会社でGoogleドライブを使っているなら、会社の資料はすでにGoogleに預けています。それでもGoogleが勝手にその中身を見て商売に使うことはありません。契約したアカウントで使っている限り、そういう約束になっているからです。
ChatGPTも同じ考え方でできています。個人が無料で使うプランは、入力した内容が学習に使われる設定が最初からオンになっています。一方、会社として契約する法人向けのプラン(ChatGPT TeamやChatGPT Enterprise)は、最初から「学習には使わない」という約束で提供されています(マネーフォワード、2026年3月)。つまり、個人のアカウントで無料版を使わせているか、会社としてきちんと契約したアカウントを使わせているかで、リスクはまったく違います。
ここで一つ、注意すべき誤解があります。「学習に使わない設定にすれば、それで全部解決する」というのは正しくありません。学習に使わないことと、データがすぐ消えることは別の話で、不正利用の監視のためにデータが最大30日ほど残る場合があります(ChatGPTコンサルティング、2026年6月)。また、設定を変える前に入力した内容は、後から取り消すことができません(note、未来共創コミュニティ、2026年5月)。設定は有効な手段ですが、万能ではないということです。
技術的な設定だけでも足りません。JBCCの指摘の通り、AIのリスクへの対応は特定のソフトを入れるだけで終わる話ではなく、社内でどう使われているかを把握し、ルールを決め、設定を整え、それを続けて見直していく作業が必要です(JBCC)。
私は製造業の経営に携わっていた頃、営業の情報がすべて担当者一人の頭の中にしかなく、経営側からはまったく見えないという状態を経験しました。見えないから任せるしかなく、任せるからますます見えなくなる、という悪循環でした。今、社員がどのAIに何を入力しているか経営側が把握できていない状態は、これと構造がよく似ています。見えていないものは、対策のしようがありません。
導入をやめるべきかどうかの判断
ここまで読んで「怖いからAIは使わせない方がいい」と考えるのも、一つの結論として間違いではありません。ただ、Hajimariの調査にあった通り、隠れて使う人はすでにいます。禁止しても、使われなくなるとは限りません。
一方で、「ルールさえ作れば安心」というのも危険な発想です。私が過去に会社の現場で見てきたのは、経営側が良かれと思って作ったルールやマニュアルが、現場の実情と噛み合わず、結局形だけになって終わるという構図でした。AIについても同じことが起こり得ます。ルールを作って終わりにするのではなく、実際に何が入力されているか、何が起きているかを、定期的に確認し続けることが要ります。
イタリアのデータ保護当局が一時的にChatGPTの利用を禁止し、改善を求めた例もあります(AI新聞、2024年5月)。禁止という選択肢自体は、実際に取られたことのある手段です。自社の情報の重さと、社員の使い方の実態を見た上で、どちらを選ぶかを決めるのが筋だと考えます。
よくある疑問
Q. ChatGPTに入力した内容は必ず学習に使われるのですか
いいえ。会社として契約する法人向けのプランでは、最初から学習に使わない前提で運用されています。学習に使われるのは主に、個人が無料で使うプランで、設定を変えていない場合です(マネーフォワード、2026年3月)。
Q. 「学習に使わない」設定さえすれば安心ですか
設定は有効ですが、それだけで全部が解決するわけではありません。設定前に入力した内容は後から取り消せず、データも監視目的で一定期間残ることがあります(note、2026年5月/ChatGPTコンサルティング、2026年6月)。
Q. 中小企業でAI起因の情報漏洩がどれくらい起きているか、数字はありますか
公的機関による確定的な集計は見当たりませんでした。国内の調査では、AI利用者の約8割が何らかのトラブルを経験したという結果があります(Admina by Money Forward、2025年10月)が、これは企業規模を分けた統計ではありません。
Q. 個人情報保護委員会がOpenAIに注意をしたと聞きましたが、罰金は科されたのですか
2023年6月に個人情報保護委員会が行ったのは行政指導であり、罰則や罰金を伴うものではありません(Impress Watch、2023年6月)。
本記事は、公開されている調査・報道をもとにまとめたものです。あわせて、書き手自身が製造業の経営で経験した「情報が一人の中に閉じてしまう」構造についての実感を、一部反映しています。
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